第44回ローザンヌ国際バレエコンクール決戦をみた。
今回もやはり、沢山のアジア勢が74人の選考枠に残った。そして最終成績では、日本の中村淳之介さんを含め3人のアジア出身者が入賞した。
一見それだけ、アジアのバレエ力も上がっているように見えているが、単純にそうは評価できかい一面もある。その典型が日本人バレエダンサー。最初のビデオ審査の時点で、応募総数292人のうち、87人もビデオを送っている。明らかに挑戦者の数が欧米人と比べ桁違いに多いのである。
なぜ日本勢はこんなにローザンヌバレエコンクールに出場したいのか。かつての私もそうだったが、要は海外のバレエ団、特にヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアで踊りたいと考えているからだ。特にヨーロッパはバレエの本場である。舞台数も多く、色々な演目を踊るチャンスに恵まれる。そしてバレエダンサーと言う職業が、日本よりもシステムとして確立していて、ちゃんとしたお給料をもらうことが出来る。いっぽう日本では例えプロになっても、お給料はほとんどゼロに等しい。プロフェッショナリティとしてのバレエダンサーの位置づけが大きく異なるのだ。
そう考えると、海外で踊りたい日本人の若いダンサーが、ローザンヌバレエコンクールに出場したいと考えるのは当たり前だ。ところがヨーロッパ勢の出場者は特に少ない。欧州にはしっかりしたバレエスクールがあり、一流のバレエスクールを卒業すれば、直結のバレエ団や他のバレエ団に入りやすいので、わざわざローザンヌバレエコンクールに出場する必然性は乏しい。日本人出場者にとってローザンヌバレエコンクールに“出場する”“決戦に残る”そして“入賞をする”と言うことは、ヨーロッパの若いダンサーの卵達と一緒に一流のバレエスクールに入学するか、バレエ団で研修をする事が出来るチャンスをつかみプロのバレエダンサーになれるかもしれないスタート地点にようやく立つチケットを貰う登竜門のようなものなのである。
今年のコンクールで、1位に輝いたのは中国人のユーハン。手足が長く、身体的にかなりの可能性を持ったダンサーだ。彼女のバレエバリエーションとコンテンポラリーバリエーション、どちらも日本人や他国の挑戦者も同じバリエーションを踊ったが、厳しいことを言うと、やはり彼女の持って生まれた体の美しさ、身体能力の素晴らしさが際立った。本当の舞台だったら同じバリエーションをほかの人が踊ることはないので、観客が観た物が素晴らしいか素晴らしくないかの評価で良い。ところがコンクール、特にローザンヌバレエコンクールでは同じ演目を踊る人が多いので、持って生まれた体の素質(手足の長さや甲の高さなど)のポテンシャルを比べてしまう。
残念ながら持って生まれた素質は、努力しても克服できないことが多い。日本人の場合、昔に比べれば大分良くなったが、特に恵まれた体型の子は少なく、だからこそ技術面などで補って海外コンクールで受賞したり、海外のバレエ団に入団したりするケースが多い。
今年の日本勢は確かに若いのだが、小柄で他の出場者に比べて子供っぽさが目立った。それでも技術面はしっかりしていたので、身体的欠点が分からなくなるほど自分の良さを引き出し、オンリーワンのダンサーにじゅうぶん成長できると見た。
今回特筆すべきは、南アフリカ出身のリロイプリモだった。すでに自分の良さを引き出す方法を心得ているように見えた。まだ技術面では幼い感じがあったが、あの若さで中々あのように観客を引き付ける魅力を持った踊はできない。彼は彼にしかできないオンリーワンの踊を踊ったからこそ、獲るべくして観客賞を獲得したと思う。
番組内でコメンテーターの小山さんも言っていたが、このローザンヌバレエコンクールの決戦に出場したことが彼らのバレエ人生のゴールではない。このコンクールから彼らの良いポテンシャルを引き出してもらって、世界に羽ばたくチケット(チャンス)をもらったのだから、これからも素敵な素晴らしいダンサーになるようにぜひ努力してほしい。
最後に、このことだけは言っておきたい。若いバレエダンサーの現実は、ローザンヌに出場しなかった子、ビデオ審査で落選した子、そしてローザンヌバレエコンクールの決戦に残れなかった子達が圧倒的に多い。それでもバレエを一生懸命にやっている子が将来良いダンサーにならないとは限らない。どこで、また違うチャンスが巡って来るかわからないからだ。だから諦めず、夢を捨てず、自分が信じたバレエを精一杯踊っていってほしいと願う。未来のバレエダンサーに栄光あれ!
(元海外バレエ団ダンサー butterfly)
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